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きままにきまま

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ソロモンの偽証 感想

今週のお題「最近おもしろかった本」

ソロモンの偽証 第I部 事件

ソロモンの偽証 第I部 事件

 
ソロモンの偽証 第II部 決意

ソロモンの偽証 第II部 決意

 
ソロモンの偽証 第III部 法廷

ソロモンの偽証 第III部 法廷

 

ソロモンの偽証、読了いたしました。

大作とあって一気に読みたかったので積読になっていたものを、遂に一気読み!

非常に面白かったです。

あらすじ

内容紹介
その法廷は十四歳の死で始まり偽証で完結した。五年ぶりの現代ミステリー巨編! クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した十四歳。その死は校舎に眠っていた悪意を揺り醒ました。目撃者を名乗る匿名の告発状が、やがて主役に躍り出る。新たな殺人計画、マスコミの過剰報道、そして犠牲者が一人、また一人。気づけば中学校は死を賭けたゲームの盤上にあった。死体は何を仕掛けたのか。真意を知っているのは誰!?
内容(「BOOK」データベースより)
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。(Amazonより)

以下ネタバレを含む感想です。未読の方はお気を付けください。割と抽象的に書いていくつもりです。なお、実写化された映画は見ておりません。

 1990年のクリスマスイヴに、ある男子が学校の屋上から転落死したことがきっかけで様々な人間へ波紋を呼んでいく話です。

学校で孤立していたその少年・柏木卓也が死んだことで精神的ショックを受ける生徒も多い一方、主人公格の一人・藤野涼子は何も感じないというのが感想だったのが何だか現実的でした。

私自身は身近でそのような事件が起こったことはないけれども、全く興味のないクラスメイトが「自殺」をしたのだとしたら、果たして涙が出るのだろうかと考えさせられました。

彼の死については悲しみだけではなく、怒りや更なる事件を巻き起こしていきます。

彼に関わる人だけでなく、学校全体が疑心暗鬼に陥りいじめがあったのではないかとか、本当は殺されたのではないかとか。

当初は警察も自殺と断定したのですが、ある「告発状」が届いたことで柏木卓也の自殺は事件性を持ち始めます。

彼を殺したのは学校内のワル三人組である。差出人不明の手紙が学校の校長と、警察官の父を持つ藤野涼子、そして柏木卓也の担任であった森内に送られました。

ここで面白い(と言ったら不謹慎なのでしょうが)ことに森内は隣人・垣内美奈絵に逆恨みを受けていて、隣人がこの手紙を盗み、しばらく経ってからテレビ番組へ投書してしまうことで事件は全国に知られることになります。

はっきり言ってここらへん読んでた時は、なんて悪人がいたものだ、と思いました。

まず、告発状の差出人は三宅樹里というニキビのひどい、藤野涼子のクラスメイトです。彼女は涼子が優等生なことに一方的な敵対心を持っていました。また担任の森内にも不満を抱き、彼女たちを困らせる為に、つまりは嫌がらせの為に、この告発状を書きます。

更に三宅樹里に不快感を持ったのは友人というよりも下僕扱いしている浅井松子とを引き連れて自宅より遠いところまで行ってポストに投函したことです。

松子は何も悪いことをしていないどころか、樹里を止めていたのですが、樹里の強引な「支配」を受けて、そして彼女にすべてを樹里は擦り付けます。そして松子は告発状をきっかけに死んでしまいます。それを喜ぶ樹里。

もう最高潮にムカつきましたw自分のニキビ顔がひどく、ブスだのなんだのと言われて大きなコンプレックスを持つ14歳という多感な時期の少女は確かに哀れです。

しかしそれ以前に、顔が綺麗になっても彼女の性根の悪さというか、もはや虚言癖を通り越して妄想を現実として訴える姿はとにかく醜かった。

告発状の真実は最後まで分からない状態で終わるのですが、三宅樹里という少女は一生苦しめばいいのにとすら思うほど、彼女については嫌悪感を覚えました。

そして垣内美奈絵の逆恨み。彼女と樹里は少し似ていたようにも思います。

彼女達からすれば理由は大いにあるのですが、外から見れば完全にただの逆恨みで、精神を病んでいます。

垣内美奈絵は森内を後に重篤な怪我を負わせて逮捕され、その時には「目を覚ましていた」のでまだマシでした。

私は個人的に樹里が裁かれなかったことが最後まで喉につかえていますが、それはそれとして。

 

この事件の波紋は大きく広がり過ぎて誰の手にも余ることになってしまいます。大人たちは臭い物には蓋をする処理に我慢ならなくなった生徒たちは卒業制作の一環として「法廷」を開くことにしたのです。

その発想は面白いな、と思いました。普通だと学級会でも開いて誰かを糾弾してさらし者にして憂さ晴らしでもする、ってのが中学生なのかなと思ってしまうのですが、彼らは「法廷」というある種気張った舞台でこの事件を裁くことにしたのです。

被告人はワル三人組のリーダーで告発状に犯人であると書かれていた大出俊次。まあ簡単に彼を表すとしたら筋金入りのDQN日本語でおk?って感じの人物です。親もモンペです。

法廷を開くには検事、弁護人、判事、そして陪審員が必要です。

賛同する者は決して多くなかった。けれども何とか集まりました。

ここで注目すべき点は卓也の他校の友人・神原和彦の登場です。

臭う!臭うぞ!!(ミステリ厨の嗅覚)

後述しますが、彼こそが一番の重要参考人と言って間違いありません。

彼は被告人の弁護人になりました。

神原は幼い頃にアルコール依存症の父に虐待を受け、母を殺され、父も自殺し、現在は義父母の元で暮らすという過去を持った少年です。

検事は藤野涼子。

そして事件の調査ははじまります。中学生にしては具体的過ぎるな、とか、難しいことを知り過ぎているな、とかちょっと変な感じは受けましたが、これフィクションなのでね。それでいいとしようと思い読み進めました。

そして開かれる「法廷」。

様々な人間が証言をし、真実が暴かれていきます。

警察も大人も言いたくなかった、蓋を固く閉めて食い縛っていた真実が露見される。

これは誰にとっても傷になり、作中の表現を借りるなら「泥だらけ」になることです。

誰も得なんてしないんです。ただ真実を知りたい。その気持ちだけが十四歳、法廷の時点では十五歳の中学生の心を動かしたのでしょう。

三宅樹里の証言はやはり虚言でした。涼子はそれを知った上で、彼女を法廷に立たせました。それも涼子なりの罰し方だったのかもしれないと、今では思います。

死亡した柏木卓也という人物は物を考えすぎる癖がありました。哲学的と言ってもいい。でも、中学生の頃に、「生」と「死」とは何だろう、と私も考え込んだことがあって、死という選択肢を考えたこともあったので卓也に共感するところは多かったです。

それに根気よく向かい合った神原少年も過去に思うところがあったのでしょう。彼は唯一と言ってもいい、卓也の友達でした。

その彼が証言台に立つことは中学生たちには予想が出来ず、驚いたことでしょう。

フラグが立ちまくってたので読者には分かるんですけどね。でも彼の

結審の前に都合よく彼の遺書が見つかってしまうのはちょっとご都合かな、とも思いましたが、それで良かったとも思います。

拙い小説調の遺書は、家族には小説だと思われて遺書とは見做されなかったのです。
しかしこれは確かに遺書だった。

結審。

大出は無罪。

卓也は自分を自分で殺した、ということが明らかになります。

彼は死がどういうものか悩んでいた。生というものにも飽きていた。死とは何なのか。実験した結果が「自殺」という形だったように思います。

 

誰もが傷だらけで、泥だらけになった夏。

それは彼らの青春であった、と思います。

こういう形を青春と呼んでいいのかは分かりませんが、確かに青春と思ったのです。

暑い夏を、柏木卓也という謎を追い続けたこと。

法廷という形でやり遂げたことの先には、彼ら彼女らの目には何かが見えていた。

そう思います。

 

野田君が教師になったのは何だか意外でしたが、最後を見ると野田君の回想の話だったのかな、とも思いました。

 

なーんか全体的に抽象的な感想になってしまいましたが、私には考えさせられることが多い作品でした。

中学生という多感な時期だからこその作品だと思いますし、この時期に一般的にはアイデンティティの確立がなされる時期な訳ですから、彼らの人生に大きな影響を残す事件だったことに間違いはないと思います。

読んでみると実際長いのですが、書き込まれている内容の密度が心地よくて、宮部みゆきさんの文章は好きです。

是非皆さんもお読みください。

私は映画がDVDになったら借りてみようかなと思っています。どんな風になるんだろな?